お金と労働と地球株

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1. 現代のお金

1-11. 【参考】お金の機能喪失

お金は歴史的に、貝や石から貴金属になり、やがて紙切れ(現金)へと形が変わって来ました。 そして今日の主要なお金は、もはや物理的なモノではない単なる数字(預金)です。

【補足】更に遡ると、古代メソポタミアでは粘土板にトークンを貼り付けたり、トークンの跡を付けたりすることで経済的な取引を記録していました。 これもある種のお金と言えます。 お金は物理的な実体が無い情報だったという意味では、むしろこちらの方が現代のお金に近いかもしれません。

なかでも「金」(「お金」との混同を避けるため、以下「ゴールド」と表記)で作られた金貨が、長らく地球標準のお金として用いられました。 ゴールドは地球上で唯一朽ち果てることのない元素であり、永遠に輝き続けます。 また、大変やわらかく、密度が高いため、少量のゴールドで大量の金貨を作ることができました。 これまで採掘されたゴールドは全て、今でも地球上のどこかに存在しており、その総重量はわずか125,000トンに過ぎません。 誰もが欲しがる非常に希少な資源であり、お金に適した物質でした。

【補足】人間だけでなく、神もまたゴールドが大好きです。 旧約聖書によると、神は自らを祀らせる聖なる幕舎について、内側も外側もゴールドで覆い、幕舎の飾りもまたゴールドで作るようにと人間に命じています。

やがて、金貨を預かる業者(金細工師)が現れ、彼らが発行する預かり証(金匠手形)が金貨と同じ働きをするようになりました(参照:1-2. 【参考】預金の発行プロセス)。 こうしてお金は、金貨から「ゴールドと交換できる紙幣」(兌換紙幣)に変わります。 なお、このようなゴールドに裏付けられた紙幣をお金として用いる経済制度を「金本位制」と言います。

第二次世界大戦末期になると、ゴールドと交換できるのは数ある通貨の中で唯一「ドル」だけとなりました。 これはドルを介した金本位制であり、ゴールドとドルの相場を固定して、各国通貨とドルの相場を固定するものでした(ブレトンウッズ体制)。 このように、時代を経るごとにお金とゴールドの結び付きはどんどん弱くなっていきました。 それでもこの時点ではまだ、お金はギリギリのところでゴールドと繋がっていました。

さて、経済学によると、お金には以下の3つの機能があるとされています。

このうち「価値の保存」に着目すると、金貨(あるいはゴールドに基づいたお金)は確かにその価値を維持できています。 なぜなら、ゴールド自体に価値があることに加え、お金の発行量がゴールドの採掘量に制限されるからです。 これらの通貨制度の下では、原理的には新しいゴールドが採掘されない限り追加のお金を発行できません。 この物理的な制限のために、これらのお金には「価値の保存」機能が自動的に備わっていました。

【補足】金本位制ではお金の価値は保たれるものの、逆に必要なお金を発行できないため、当時はよくデフレに陥りました。 児童文学作品「オズの魔法使い」は、金本位制下でのデフレ脱却のために「ゴールドだけでなくシルバーも本位に加えてお金を増やせ」と暗に主張する寓話です。

かろうじて繋がっていたお金とゴールドの結び付きは、1971年に完全に断たれます。 ニクソンショックによって、ドルとゴールドの交換が停止されたからです。 お金はついにゴールドから解放されました。 この時を境にお金のルールは塗り替えられ、お金はゴールドではなく、あるいはゴールドに結び付く紙でもなく、いくらでも発行できる単なる紙や数字になりました。 お金の発行量の制限は、ゴールドの採掘量という物理的なものから、特定機関の裁量に依存する方式に変わりました。 今日の主要なお金は「数字」に過ぎず、物理的な裏付けもなく、銀行の裁量次第でいくらでも発行できます。

ここまで見てきたように、現代のお金は構造的に増え続ける仕組みになっています。 お金が世の中のモノやサービスよりも増えれば、お金の価値は下がり、インフレになります。 私たちはお金の価値がしばしば変わることに慣れており、インフレを当たり前のことと考えています。 しかし、人類の歴史を俯瞰すると、インフレは比較的新しい現象です。 19世紀まではインフレがほとんど発生せず、お金の価値は誰にとっても不変でした。 お金が大量に発行され、インフレが当たり前の現象になったのは20世紀以降のことです。

【補足】上記にもかかわらず、日本では実に30年近くもデフレが続いています。 そのために感覚が麻痺しがちですが、私たちは長期的にはインフレに備えておかなければなりません。

インフレが継続的に発生するということは、お金の価値が減り続けるということです。 現代のお金は、あくまで長期的に見れば、本来お金に要求される3つの機能のうち「価値の保存」機能を既に失っています。 特に1971年以降のお金は、それまでのお金と見た目は同じでも(預金は見えませんが)質的には全く異なっています。 お金は、そのまま持っていても価値を維持できないものに変質してしまったのです。


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1. 現代のお金

1-11. 【参考】お金の機能喪失