お金と労働と地球株

~無能が30代で資産1億円を達成した方法~

3. 地球株

3-4.【参考】市場ポートフォリオと地球株

ここまで、地球株の概念を述べてきました。 金融工学の知見がある方は「地球株とは市場ポートフォリオのことか」と思うかもしれません。 しかし、地球株と市場ポートフォリオは違います。 ここでは参考情報として、両者の関係に触れたいと思います。

市場ポートフォリオとは、世の中のすべてのリスク資産を、時価総額に比例した比率で保有するポートフォリオのことです。 金融工学において最も効率の良いポートフォリオであるとされています。 ただし、前提条件として「市場が完全に効率的」である事など、色々な仮定が必要になります。

「市場が完全に効率的」とは、いかなる時でも株価はその本質価値に対する最良の推定値になっている、という状態の市場です。 このような市場を「効率的市場」と言います。 効率的市場では、個別株式や複数株式から成るポートフォリオで、市場全体の収益率を上回ることはできません。 もし市場が完全に効率的なら、現在知られている情報はすでに株価に反映されています。 したがって、将来の株価は、現在は知られていない情報だけによって変動することになります。 未知の情報は予測できないため、将来の株価もまた予測できません。 よって、効率的市場では株価はランダムに動きます。 効率的市場はあくまで理論上のものですが、現実の株式市場も概ね効率的であると考えられています。

なお、もし現実の株式市場が効率的市場でなかったとしても、地球株の優位性は変わりません。 この点は次節で検討します。

市場ポートフォリオの定義において、「すべてのリスク資産」という点に注意が必要です。 よく「市場ポートフォリオとは世界の株式市場全体のこと」といった説明を見かけますが、これは誤解(あるいは説明不足)です。 すべてのリスク資産という定義なので、株式に限らず、不動産やその他の実物資産もすべて含むポートフォリオでなければなりません。 さらに、山や海といった、そもそも投資不可能な対象も含まれます。 また、誰かの労働といった人的資本も含まれるはずですが、これも実際には投資不可能なものです。 つまり、市場ポートフォリオとは、想像はできても実現はできない理想上のポートフォリオなのです。

【補足】実証研究では市場ポートフォリオの効果が否定されている、とされています。 しかし、市場ポートフォリオは上記のとおり、現実には作れないし、捉えることすらできません。 その意味ではそもそも実証しようがないはずです。

今日、お金は基本的に増え続け、必ず地球上のどこかにあります (参照:1-10. 地球上で増え続けるお金)。 ということは、株式に限らず、地球上でお金が投じられる可能性があるすべての資産(≒市場ポートフォリオ)を保有できれば、地球上のお金の発行の伸び率と全く同じ収益率を得られることになります。 しかし上記のとおり、現実には個人が投資不可能な領域(たとえば他人の人的資本)にもお金が投じられることから、そのようなポートフォリオは現実には作れません。

それでは、せめて地球上で広く投資可能なすべての資産でポートフォリオを作ろう、という考え方ができます。 原理的には、株式クラス内の分散だけでなく、資産クラス自体も可能な限り分散しておくべきです。 地球上でお金が投じられる資産を可能な限り捕捉する意味でも、資産クラスの分散の観点からも、最終的には地球株に留まらず、地球上の資産全体の縮小コピーとなるようなポートフォリオを構築するべきです。 しかし、一般的な会社員であれば、当面は地球株を増やしていくことに専念できます。 これについては次章で詳細に検討します。

地球株は、すべてのリスク資産から成る市場ポートフォリオから、株式クラスだけを抜き出したものです。 市場ポートフォリオのごく一部に過ぎません。


お金と労働と地球株

3. 地球株

3-4. 【参考】市場ポートフォリオと地球株