お金と労働と地球株

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3. 地球株

3-4.【参考】市場PF、地球PF、地球株

ここまで、地球株の概念を述べてきました。 金融工学の知見がある方は「地球株とは市場ポートフォリオのことか」と思うかもしれません。 しかし、地球株と市場ポートフォリオは違います。 ここでは参考情報として市場ポートフォリオについて触れ、そこから地球株に至る関係を考えたいと思います。

市場ポートフォリオ(以下、市場PF)とは、世の中のすべてのリスク資産を、時価総額に比例した比率で保有するポートフォリオのことです。 金融工学において最も効率の良いポートフォリオであるとされています。 ただし、前提条件として「市場が完全に効率的」である事など、色々な仮定が必要になります。

「市場が完全に効率的」とは、いかなる時でも価格はその本質価値に対する最良の推定値になっている、という状態の市場です。 このような市場を「効率的市場」と言います。 もし株式市場が効率的市場であったとしたら、個別株式や複数株式から成るポートフォリオで、市場全体の収益率を上回ることはできません。 市場が完全に効率的なら、現在知られている情報はすでに株価に反映されているからです。 したがって、将来の株価は、現在は知られていない情報だけによって変動することになります。 未知の情報は予測できないため、将来の株価もまた予測できません。 よって、効率的市場では株価はランダムに動きます。 効率的市場はあくまで理論上のものですが、現実の株式市場も概ね効率的であると考えられています。

なお、もし現実の株式市場が効率的市場でなかったとしても、地球株の優位性は変わりません。 この点は次節で検討します。

市場PFの定義において、「すべてのリスク資産」という点に注意が必要です。 よく「市場PFとは世界の株式市場全体のこと」といった説明を見かけますが、これは誤解(あるいは説明不足)です。 すべてのリスク資産という定義なので、株式に限らず、不動産やその他の実物資産もすべて含むポートフォリオでなければなりません。

市場PFは、地球上の山、海、川といった、そもそも投資不可能な対象も含んでいるかもしれません。 誰かがある山を所有しているとします。 その山には売り出し価格があり、その価格が常に一定ということはなく、価格は変動するでしょう。 そうであれば、この山もまたリスク資産であり、市場PFに含まれます。 そのような山は地球上の至るところに存在しており、その全てに投資することなど不可能です。

さらに投資不可能な領域として、人間が挙げられます。 労働者は人的資本という資産をもっていると見なせます。 人的資本の価値は人によって異なります。 また同じ人間であっても、10年前と現在では人的資本の価値が異なるでしょう。 ということは、人間自体もリスク資産と考えることができ、市場PFに含まれていてもおかしくありません。 しかし言うまでもなく、21世紀の現代において人間を所有することなどできず、まして全地球人に投資することなど不可能です。

つまり、市場PFとは想像はできても実現はできない理想上のポートフォリオなのです。 モダンポートフォリオ理論のCAPMにおいて、確かに市場PFこそ唯一にして最も効率的なポートフォリオだとされています。 しかし、市場PFは現実に構築することが不可能であり、それ以前に具体的な構成資産を想像することも難しいです。

【補足】実証研究では市場PFの効果が否定されている、とされています。 しかし、市場PFは上記のとおり、現実には作れないし捉えることすらできません。 その意味ではそもそも実証しようがないはずです。

今日、お金は基本的に増え続け、必ず地球上のどこかにあります (参照:1-10. 地球上で増え続けるお金)。 ということは、株式に限らず、地球上でお金が投じられる可能性があるすべての資産(≒市場PF)を保有できれば、地球上の通貨発行量の伸び率と全く同じ収益率を得られることになります。 しかし上記のとおり、現実には個人が投資不可能な領域(たとえば他人の人的資本)にもお金が投じられることから、すべての資産を保有することは残念ながらできません。

そこで、投資不可能な領域は仕方ないとしても、せめて次善策として「今日地球上で広く投資可能なリスク資産を網羅したポートフォリオを作ろう」と発想できます。 そのようなポートフォリオを、本サイトでは「地球ポートフォリオ」(以下、地球PF)と呼びます。 市場PFと地球PFの関係は「市場PF>地球PF」となります。 2018年現在、一般庶民が広く投資可能な資産クラスは、株式、債券、不動産、商品です。 つまり地球PFとは、地球全体の株式、債券、不動産(REIT)、商品(コモディティ)を時価総額に比例した比率で保有するポートフォリオです。 実は地球PFこそ、最終的に目指すことになるポートフォリオです。 地球上でお金が投じられる資産を可能な限り捕捉する意味でも、資産クラスの分散の観点からも、最終的には地球株に留まらず、地球上で投資可能な資産全体の縮小コピーを保有すべきです。

この地球PFから株式クラスだけを抜き出したものが地球株です。 つまり両者の関係は「地球PF>地球株」となります。 地球株は、地球上の株式を時価総額に比例した比率で保有するポートフォリオです。 最終的には地球PFを構築すべきですが、一般的な会社員であれば、当面は地球株のみを増やしていくことに専念した方が良いです。 これについては次章で詳細に検討します。

市場PF、地球PF、地球株の関係についてまとめます。 市場PFとは、世の中のすべてのリスク資産を時価総額比例で保有するポートフォリオです。 市場PFから投資可能なリスク資産のみを抽出し、同じく時価総額比例で保有するポートフォリオが地球PFです。 さらに地球PFから、株式クラスのみを抜き出したものが地球株です。 3者の関係は「市場PF>地球PF>地球株」となります。 このように地球株は市場PFとは異なるポートフォリオであり、市場PFのごく一部に過ぎません。


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3. 地球株

3-4. 【参考】市場PF、地球PF、地球株