お金と労働と地球株

~無能が30代で資産1億円を達成した方法~

1. 現代のお金

1-4. 利用者全体のお金

現代では銀行(中央銀行、民間銀行)のみが「お金の発行者」であり、それ以外は皆「お金の利用者」です。 そしてここまで見てきたとおり、利用者の世界に存在しているお金はすべて銀行からの借金です。 利用者全体のお金は、誰かが民間銀行から借り入れない限り増えません。 逆に、利用者が銀行に借金を返済することによってのみ、その分のお金が減ります。 誰かが民間銀行からお金を借りると、利用者の世界ではお金と借金が同時に同額増えます。 逆に誰かが民間銀行に借金を返すと、利用者の世界ではお金と借金が同時に同額減ります。 このように、お金の増減の瞬間には必ず同額の借金もワンセットで増減するため、利用者の世界には常にお金と同額の借金が存在しています。 もし全ての借金が返済されたら、世の中のお金は全て無くなってしまいます。

お金の利用者は、政府、企業、家計の3者に分けられます。 国の単位で見れば、これらの他に「海外」という主体が存在するはずです。 しかし、本サイトのスコープは国ではなく地球全体であり、全ての国が含まれています。 よって、海外という概念は不要となります。 言い換えれば、上図には地球上のすべての国のすべての経済主体が含まれています。

さて、お金の総量は銀行を介さないと増減しないため、お金の利用者同士の取引では全体のお金の総量は変わりません。 給料の支払い、商品の購入、利益の獲得、納税、財政支出、といった利用者同士の取引では、当事者間でお金が移動するだけであり、全体のお金は増減しません。

【補足】ここではお金を発行できるか否かの違いに着目して、民間銀行を「お金の発行者」としています。 しかし同時に、民間銀行もまた利益を追求する民間企業です。 その意味では、民間銀行は「お金の利用者」でもあります。

政府もお金の利用者に過ぎない、という構図に違和感を覚える方も居られるかもしれません。 「通貨発行権がある国では政府がいくらでもお金を作れる」と言われることがあります。 しかし現在の通貨制度では、その通貨発行権を独占的に行使できるのは政府ではなく銀行なのです。 現代では、たとえ政府であっても民間部門と同様に、お金を得るには「稼ぐ(徴税)」か「借りる(国債発行)」必要があります。 本当の意味でどこからも資金調達の必要なくお金を創出できるのは銀行だけです。 ただし、政府もお金の利用者に過ぎないとは言え、家計や企業に比べて抜群に信用力の高い利用者です。 銀行にとって政府の信用リスクは事実上ゼロなので、多くの先進国で政府はお金を借りっ放しの状態になっています。 政府がいくらまでお金を借りられるのか(国債の発行上限)は、通常その国の供給力に依存します。

【補足】1945年、日本に進駐した連合軍は通称「B円」と呼ばれる軍票を新たなお金として発行しました。 沖縄では1958年まで、このB円が法貨として実際に利用されました。 当時の日本政府は、連合軍に対してこの軍票の発行取り止めを強く要請し、連合軍はこれを回収しました。 これにより、本土でB円が利用されることはありませんでした。 もし当時の日本政府が行動していなければ、日本は通貨発行権が無い国になっていたかもしれません。

銀行設立前は、もちろん国家(政府)が直接お金を発行していました。 しかし、どの国も財政が窮するとお金を発行し過ぎてしまい、酷いインフレを招いて財政破綻してきました。 そこで、政府ではなく中央銀行が独立した権限の基でお金(現金)を独占的に発行する、というルールが作られました。 これは各国が歴史から学んだ教訓です。

日本では、明治政府が西南戦争の軍事費調達のためにお金を発行し過ぎて酷いインフレが起きました。 その反省から、明治15年に日本銀行が設立され、日本銀行だけがお金(現金)を発行できるようになりました。 なお、1997年の日銀法改正により日本銀行の独立性はより強化され、今に至ります。

あくまで利用者全体のお金が増えるのは「お金の発行者」である銀行が貸し出した時のみであり、利用者全体のお金が減るのは銀行に借金を返済した時のみです。 そして政府も含めた「お金の利用者」同士の取引では、利用者全体のお金の量は変わりません。


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