お金と労働と地球株

~無能が30代で資産1億円を達成した方法~

1. 現代のお金

1-5. 民間部門全体のお金

前節でお金の発行者と利用者の全体的な枠組みを見てきました(参照:1-4. 利用者全体のお金)。 ここでは、お金の利用者のうち特に民間部門(企業、家計)に着目してお金の増減を検討します。 民間部門でのみ流通しているお金のことを一般に「マネーストック」と言います。

政府も民間部門も大きな枠組みではお金の利用者同士です。 利用者同士の取引では全体のお金は増減せず、お金が移動するだけでした。 一般に「誰かの赤字は誰かの黒字」なので、政府が赤字の場合は民間部門が黒字だということになります。 逆に政府が黒字の場合は民間部門が赤字になります。 具体的には、政府が「徴税<財政支出」の状況では、政府が財政赤字となり民間部門が黒字となります。 逆に政府が「徴税>財政支出」の状況では、政府が財政黒字となり民間部門が赤字となります。 よくニュース等で政府の財政赤字が問題視され、多くの民間の有識者もこれに賛同しています。 しかし、政府が財政赤字の解消を目ざすということは「徴税>財政支出」の状態にして「民間部門のお金を減らす」ということを意味します。

【補足】本サイトでは最初から地球全体をスコープにしているため、海外という主体は登場しません(参照:1-4. 利用者全体のお金)。 一方、国の単位で見れば、ある国の「政府も民間部門も黒字」(その分、海外が赤字)という状況があり得ます。

さて、民間部門全体のお金は銀行か政府とのやり取りによってのみ増減します。 もちろん、民間部門の中で閉じた取引の場合は民間部門全体のお金の総量は変わりません。 銀行とのやり取りでお金が増減する場合と、政府とのやり取りでお金が増減する場合とでは大きく異なることがあります。 それは借金を伴うかどうかです。 これまで見てきたとおり、銀行からの借入や銀行への返済ではお金と借金が同時に同額増えたり減ったりします。 一方、政府からの財政支出や政府への納税では、借金は伴わずに民間部門のお金だけが増減します。

日本ではバブル崩壊後、企業が銀行からお金を借りず、逆に返済に奔走しました。 それでは全体のお金が減ってしまうので、代わりに政府が借金をして(国債発行、銀行引受け)、民間部門にお金を供給しました(財政支出)。 これが数十年も続いたため、今日、政府には膨大な借金があり、逆に民間部門には膨大な預金があります。

【補足】「国の借金(政府債務)が民間部門の預金を超えると破綻してしまう」と言われることがあります。 これは典型的な誤解であり、事実は全く逆です。 政府の借金が民間部門の預金に制限されるのではなく、政府の借金が結果的に民間部門の預金を増やします。

以上をまとめると、まず民間部門全体のお金(マネーストック)は銀行か政府とのやり取りでのみ増減します。 そして前者は借金を伴い、後者ではお金だけが移動します。


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1-5. 民間部門全体のお金