モノを借りる時にレンタル料がかかるように、お金を借りる時にもレンタル料がかかります。 それが利子です。 現代のお金はすべて銀行が作り出す借金であり、借金には利子がつきます。 利子の歴史は非常に古く、世界最古の文明であるメソポタミアで既に利子付きの貸し借りが行われていました。
一般に、利子は複利で発生します。 複利とは利子が利子を生む仕組みです。 複利では利子が元本に組み込まれて計算されるため、返済額が指数関数的に増加します。
【補足】「はてしない物語」などの作品で有名な児童文学作家ミヒャエル・エンデは、複利の異常さについて以下のように述べています。 「1マルクを2000年前に複利5%で預金したとすると、現在、その価値は太陽4個分もの金塊に相当するほど増大している。 反対に2000年間労働しても、金の延べ棒1本分の価値にしかならない。」
利子は人々を競争に駆り立て、全体の経済成長を促進させます。 お金の借り手は元金だけでなく「元金+利子」を稼いで返済する必要があります。 借り手が企業であれば、返済のために他社と競争してより良いモノやサービスを提供しようと努めます。 住宅ローンを組んだ会社員は、返済のためにより一生懸命に働きます。 もし利子が無かったら、借り手は何年経っても追加の負担が発生しないことから、返すモチベーションが低いままとなるはずです。 借金に伴う利子が競争や労働を促し、これらの集積により全体の経済成長が加速します。
現代に生きる私たちは、経済成長を当たり前のことと考えています。 しかし、経済が成長して地球上の富が増え、人々が豊かになることは、勝手に起こるような自然現象ではありません。 実際に古代から17世紀まで、つまり人類の歴史の大半を通じて地球全体の経済成長率はほぼゼロでした。 経済成長率が高くなったのは、ここ300年ほどのことです。 利子を伴う通貨システムが導入されたことで、人類の競争が促進され、地球全体の経済成長率が高くなっていきました。
利子にはこのような「プラスの効果」があるため、この通貨システムを受け入れないことは極めて難しいです。 もともと利子を許容していない文化圏であっても、やがて利子を許容せざるを得なくなります。 例えば、イスラム諸国はコーランの教えにより利子が禁止されていました。 しかし18世紀以降になると、既に利子が認められていた他の文化圏に比べて経済成長の遅れが顕著になり、イスラム圏の地位低下に繋がりました。 そのため、近年は苦肉の策で事実上利子を取ることを認めています。
別の言い方をすれば、利子を伴う通貨システムが地球全体の永続的な経済成長を要求します。 お金はただの数字に過ぎないため、原理的には無限に増やせます。 つまり、借金額に上限はありません。 一方で、地球の資源は有限です。 よって、このシステムは行き過ぎると地球の資源枯渇や環境破壊を伴います。 昨今、地球の環境問題が注目されています。 しかし、環境問題は今日のように環境そのものに目を向けているだけでは解決しません。 その根本的な要因は通貨システムだからです。 実は環境問題に限らず、人類の不幸の大部分が今日の通貨システムに起因しています。 こういったテーマも大変重要ですが、本サイトのスコープ外なのでこれ以上は考慮しません。
いずれにしても、私たちが常に競争と成長を強いられているのは利子のせいです。 このシステムの下では、企業はブロイラー鶏のように無理矢理成長させられます。 借金に利子がつき、それが複利で増えるという約束事があるからこそ、全体として複利での経済成長が必要になります。 経済は「成長する」というより、利子を伴う通貨システムによって「成長させられる」のです。 お金がすべて借金として供給され、その借金には利子がつく、という今日の通貨システムは、ほぼ地球全体で採用されています。 現代では地球全体が巨大なブロイラー工場のようになっているのです。