お金と労働と地球株

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2. ピンハネシステム

2-2. 資本家と集金アイテム

現代の通貨制度ではお金の発行量に上限が無く、発行されたお金は「お金の利用者」の世界に無制限に供給されます(参照:1-1. お金が生まれるとき)。 では、このお金は利用者の世界でどのように動くのでしょうか。 資本主義の経済システムの下では、お金は資本を持っている資本家の元へ自動的に集まります。

資本には株式、債券、土地、不動産など様々な種類がありますが、いずれも抽象的に言えば、その働きは同じです。 それは「お金の利用者」の世界で流通しているお金を集める、という働きです。

株式は企業の所有権です。 株式を保有する株主は、それによって企業の一部を所有できます。 企業が生み出した利益は原則として株主のものであり、利益の一部は配当金として株主に配られます。 債券はいわば借用書です。 お金を借りたい政府や企業等が発行します。 つまり債券の持ち主は、政府や企業等の借り手にお金を貸している、ということになります。 彼らはその見返りに、借り手から利子を受け取ることができます。 土地の持ち主(地主)は借り手から地代を、不動産の持ち主(家主)は家賃を受け取ります。

このように、各資本のメカニズムはその種類によって様々ですが、いずれも最終的には「お金を集める」という点で共通しています。 つまり、資本とは「集金アイテム」であり、この集金アイテムを持っている人のことを「資本家」と呼びます。 株主が配当を得る、債券保有者が利子を得る、地主が地代を得る、家主が家賃を得る、といった上記の例はいずれも、集金アイテムを所有する資本家がそれによってお金を得る、という基本パターンの派生に過ぎません。

注目すべきは、資本家は自ら働くことなく自動的に利益を得られる、ということです。 世の中の富は誰かが労働しないと増えません。 にもかかわらず、なぜ資本家は働かずに利益を得られるのでしょうか。 誰かが働かずに利益を得るということは、他の誰かが働いて、働かない者を支えている、ということになるはずです。

資本主義の世界には、原理的に資本家と労働者という2種類のプレイヤーしかいません。 このうち、働くのは労働者の方です。 ということは、労働者は資本家の分も余計に働いており、資本家はその余分な労働をピンハネしている、ということになります。 資本主義では、労働者の労働によって生み出された果実であっても、それは原則として資本家のものになります。 労働者には、基本的に次の労働を生み出すのに必要な分程度の生活費だけが給料として与えられます。 資本家は、資本をただ単に「持って」さえいれば、自分自身は働くことなく所得を得られます。 このように、資本主義では資本家が労働者の労働をピンハネできる仕組みになっています。 ピンハネの具体的なメカニズムは後述します。

資本主義が一体いつから始まったのかには諸説ありますが、資本主義が栄える前は、世界的に封建制度でした。 領主が土地(農地)を所有し、農民が領主に年貢を納める制度です。 しかし、土地の所有者は労働せず、農民の労働による果実を得る、という点に着目すれば、封建制度と資本主義は本質的に同じであると言えます。 封建制度では領主が農民をピンハネしていましたが、同様に資本主義では資本家が労働者をピンハネしています。

資本主義を支える中心的な概念は、個人が何かを所有することを認める「所有権」です。 人間社会とは異なり、動物の社会には所有権などありません。 動物の社会では、何かを持っているものよりも、単純に強いものが偉いのでしょう。 人間も原始時代であればそうだったのかもしれません。 あなたが欲しいものを既に誰かが持っている場合、単純に考えれば、その誰かをぶっ殺して奪ってしまえば良いはずです。 動物ならそうするでしょうが、人間はそうしません。 というより、できません。 国家権力、もっと具体的に言えば、国家の武力が「持っている者」を全力で守るからです。 人間の世界では、何かを持つ権利「所有権」が強力に保護されています。 所有権こそ資本主義を根本から支える権利です。

資本主義は、資本の持ち主の利益を最大化するための経済体制です。 その資本主義経済の下で、財産を築きたい人がやるべきことは1つしかありません。 それは不労所得をもたらす資本、つまり集金アイテムを手に入れることです。 今後、人類が全く新しい経済体制を作り上げたとしても、所有権の概念が残る限り、資本の持ち主が強いという基本的な仕組みは変わらないでしょう。


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