前節では、資本家は資本という集金アイテムを持っており、それによって利益を得ていることを見てきました(参照:2-2. 資本家と集金アイテム)。 資本の具体的な中身は時代とともに変わってきました。 しかし、資本が不労所得をもたらす、という性質は古代から現代にかけて一貫して存在しています。 本節では資本の歴史的な変遷を見ていきます。
古代から17世紀までの大部分の時代で、主要な資本は農地でした。 それがやがて農地に限定されず土地一般となり、18~19世紀では、土地と国債が主要な資本となりました。 特に19世紀のお金持ちの主な資本は国債でした。 この時代にはまだインフレが無く、国債は魅力的な資本だったのです。
【補足】お金が無制限に発行され、インフレが当たり前となった現代では、国債はそれほど魅力的な資産ではありません。 国債は価格があらかじめ決まっている名目資産なので、インフレになると実質価値が減ってしまうからです。 実際に、20世紀はインフレによって国債の所有者(貸し手)が報われず、一方で政府(借り手)が公的債務の実質的な削減に成功して報われてきました。 歴史的に、ほとんどの巨額の公的債務はインフレによって解決されてきました。 なお、預金も国債と同じく名目資産です。 よって、資産の大部分を預金として持っている人たちもまた報われない可能性が大きいです。
現代の先進国では、資本の半分は住居で、もう半分は各種金融資産です。 金融資産の形態は、今日では株式、債券、預貯金等になります。 なお、現代の小金持ちの主な資本は不動産であり、大金持ちの主な資本は株式です。 特に上位0.1%のお金持ちになると、その資本の中身はほぼすべて株式です。
資本はこのように変遷してきましたが、その収益率は古代から現代に至るまでほぼ変わらず、平均して4~5%を推移しています。 資本がもたらす収益率は超長期にわたって安定しており、これが持続的に3%以下にまで落ち込んだことは今日までありません。
なお、この資本収益率はあくまで各資本の加重平均をとった全体的な数字であり、資本の種類ごとに収益率は異なります。 今日の金融資産の成長率は、株式では約7~8%ほどです。 収益率が高い分、当然リスクも高くなります。 不動産や債券では3~4%ほどです。 公債や預貯金ではずっと低くなり1~2%、インフレ率を考慮すると実質的にマイナスになることもあります。 なお、現在の日本における普通預金の名目金利は、0.001%という歴史的水準の低さになっています。
このように、古代から現代にかけて、資本の中身は農地から金融資産へと大きく変わってきました。 しかし、資本が不労所得をもたらすという性質は変わりません。 また、その収益率も長期に渡ってほぼ変わっていません。 今日、金融資産の中でとりわけ中心的な資本は株式です。 今後、資本の中心は株式から他の何かに変わるかもしれません。 それでもやはり、資本の性質と収益率は今後とも大きくは変わらないことでしょう。