お金と労働と地球株

~無能が30代で資産1億円を達成した方法~

2. ピンハネシステム

2-4. 格差の要因

資本主義は、働かない資本家の財産がどんどん増える一方で、働く労働者にはあまりお金が回って来ない経済体制です。 それは資本家が労働者の労働をピンハネする仕組みになっているからであり、両者の格差は時間とともに拡大していきます。 この資本主義の実態は、19世紀の経済学者マルクスによって解明されました。 それから150年経ち、最近、ピケティという経済学者がこの構造的な格差を実証しました。 彼は2014年に出版した「21世紀の資本」の中で、3世紀におよぶ20か国以上のデータを分析し、どの時代、どの場所でも、資本の伸び率の方が経済成長率(≒賃金の伸び率)よりも常に大きいことを発見しました。 同書では、資本家と労働者の格差拡大は普遍的な現象であることを様々なデータに基づいて説明しています。 この資本主義の世界で「働いてお金持ちになろう」とすることがいかに報われない試みなのか、名実ともに明らかになったと言えます。

【補足】マネー本として有名な「金持ち父さん貧乏父さん」の中で、著者は資産を所有して利益をあげることを「お金に働いてもらう」と表現しました。 非常に秀逸な表現で、同書の出版後、猫も杓子もこの表現を使い始めました。 しかし、このきれいな言葉は事実の一面を覆い隠しています。 お金が手足をニョキっと生やして自ら働くわけがありません。 働くのはあくまで人間です。 実際には、「持てる者」が、お金ではなく「持たざる者」に働かせるのです。

資本は時代とともに移り変わってきましたが、資本収益率は長い歴史を通してほぼ一定です(参照:2-3. 資本の変遷)。 一方、経済成長率は大きく変動してきました。 しかし、経済成長率が資本収益率を上回ったことは今日まで一度もありません。 なぜ一貫して資本収益率が経済成長率よりも高くなるのか、その要因は良く分かっていません。 このことは、ピケティ自身が同書で「論理的必然ではなく、歴史的事実」であると述べています。

「資本収益率>経済成長率」の不等式は地球上で常に成り立ってきましたが、20世紀前半だけは、その差が著しく縮小しました。 数百年あるいは数千年にわたる人類史を通じて、資本収益率と経済成長率の格差が小さくなった時期は、1910~1950年にかけてのたった40年ほどに過ぎません。 20世紀前半は、人類史の中で極めて例外的な時期でした。

ところで、この資本収益率の数値は税引前のものです。 18~19世紀、第一次世界大戦前までは、税金はほとんど無いようなものでしたが、20世紀には税金が激増しました。 現在はさらに高くなり、ほとんどの先進国で約30%になっています。 このため、税引前の資本収益率が安定しているといっても、税引き後の収益率は長期的に大きく下がっています。

1913~1950年には、税引き後の資本収益率は1~1.5%まで低下し、経済成長率よりも低くなりました。 この時期は経済成長率が例外的に高かったため、この状況が1950~2010年まで続きました。 20世紀は、あくまで税引き後で見れば、人類史上初めて資本収益率が経済成長率を下回った時代であり、この逆転現象がほぼ1世紀にわたって続きました。

この例外的な状況を作り出したのは、二度の世界大戦です。 戦争による破壊と、それに伴って生まれた累進的な課税、そして戦後の例外的な経済成長によって、この逆転現象が生じました。

しかし、それ以降は再び富が集中していき、現時点では既に、経済格差は過去数百年来の最高記録にまで近づいて来ています。 現代では一部の超富裕層である個人が、1つの国と同じくらいの富を持っています。

資本家に富が集中するのは資本主義の自然な働きです。 それに対して、資本家と労働者の格差を減らす自然の力は存在しません。 古代から現代まで、資本収益率が一貫して経済成長率を上回る中、20世紀は二度の世界大戦によって例外的に格差が縮小したこと、しかしその後は再び富の集中が進んでいることを見てきました。 逆に言うと、世界大戦レベルの巨大な力でなければ格差は縮まらない、とも取れます。 第三次世界大戦でも起こらない限り、おそらく今後も資本家と労働者の格差は覆らないでしょう。


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