お金と労働と地球株

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2. ピンハネシステム

2-5. 地球上の富の偏り

資本主義経済の下で、地球上の富はどの程度お金持ちに「偏る」ものなのでしょうか。 この偏りは相当に大きく、どの時代、どの社会でも、上位10%のお金持ちが全体の富の大半を所有しています。 典型的なパターンでは、上位10%のお金持ちは、地球全体の富の60~90%を所有しています。 それに続く40%の中間層は、全体の5~35%を所有しています。 一方、下位半分(50%)の貧乏人は、ほとんど何も持っていません。 地球全体の富のうち、彼らの持ち分はわずか5%ほどに過ぎません。 このように少数の人間が富の大部分を所有する傾向は、近現代に限ったものではなく、いつの時代も、また地球上のどこでも、普遍的に見られます。

それでは、近年ではこの偏り具合はどのようになっているのでしょうか。 端的に言うと、お金持ちへの富の偏りがより大きくなっており、彼らが地球全体の富のほとんどを所有しています。 2010年代では、上位10%のお金持ちは、地球全体の富の実に80~90%を所有しています。 続く40%の中間層は、全体の5~10%しか所有していません。 下位半分(50%)の貧乏人は、典型パターンと同様で、せいぜい5%ほどしか所有していません。

「21世紀の資本」には一部の国の格差状況も掲載されています。 それによると、2010~2011年において、アメリカでは上位10%層が全体の富の72%を所有する一方で、下位50%層は全体のわずか2%しか所有していません。 同年のフランスでは、上位10%層が全体の富の62%を所有する一方で、下位50%層は全体の4%しか所有していません。 残念ながら同書に日本のデータは掲載されていませんが、富の偏りは日本も例外ではありません。 先進国の中で格差が最も少ないと言われる日本でさえ、上位10%層が、全体の富の50%を所有しています。

富の集中度合いは、お金持ちの中でも上位に行けば行くほど激しくなります。 2010年代の地球では、上位0.1%層が全体の富の20%、上位1%層が全体の富の50%、そして上位10%層が全体の80~90%を所有しています。 これは、地球全体の成人45億人のうち、最も裕福な450万人(0.1%)が平均13億円の資産を所有しており、彼らの資産を合計すると地球の富の20%になる、ということです。 また、最も裕福な4500万人(1%)は平均3.9億円の資産を所有しており、彼らの資産を合計すると、地球の富の50%になります。

逆に、あらゆる時代、あらゆる国で、下位半分(50%)の層に属する人たちはほとんど何も所有していません。 先に述べたとおり、彼らの持ち分は全体の富の5%以下です。 このことは、現代であっても100年前であっても全く同様に当てはまります。 現代でいえば、彼らの資産は低金利の預金と車くらいのものです。

この富の偏りは、いずれ均衡するのでしょうか。 経済格差が永遠に拡がり続けることは論理的にあり得ません。 富の集中が極度に進めば最終的にお金持ちの投資対象がなくなり、収益率が下落します。 そうなれば格差拡大はストップして均衡するはずです。 しかしその水準は、格差が現在よりも相当に進んだ時点になるものと推測されます。 1913年のパリでは、トップ1%層が全体の富の70%以上を所有していました。 この歴史的事実から、格差拡大が止まるまでに、少なくともこのレベルの富の集中までは起こり得るということが分かります。

資本主義はピンハネの仕組みがビルトインされた経済体制であるため、どうしてもピンハネする者とされる者との間で経済格差が拡がります。 この格差は構造的に、そして自動的に拡大していきます。 この仕組みの結果として、今も昔も、少数の人間が地球全体の富の大半を所有しています。 一方で、下位半分の人たちほとんど何も所有していません。 これが富の占有割合に着目した、資本主義下の地球の典型的な姿です。


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2-5. 地球上の富の偏り