お金と労働と地球株

~無能が30代で資産1億円を達成した方法~

3. 地球株

3-6. 地球株のリスク

前節では地球株の収益率について見てきました(参照:3-5. 地球株の収益率)。 本節では地球株のリスクを検討します。

「すべての卵を1つのカゴに盛るな」という格言があります。 すべての卵を1つのカゴに盛った場合、もしそのカゴを落としてしまったら卵がすべて割れてしまいます。 一方、卵を複数のカゴに分けて盛っておけば、そのうちの一つのカゴを落としてしまっても他のカゴの卵は無事です。 この格言は、投資において個別の株式を持つよりも複数の株式を組み合わせてリスクを分散させた方が良い、という分散投資の大切さを教えてくれるものです。 1952年、ハリー・マーコウィッツが「ポートフォリオ選択理論」の中で、複数種類の株式を組み合わせることで、リターンを損なうことなくリスクを下げることができることを明らかにしました。 彼は「すべての卵を1つのカゴに盛るな」が正しいことを数学的に証明したのです。

【補足】著名な経済学者であり、投資家でもあったジョン・メイナード・ケインズは、分散投資の考え方に反対しており、結果的に間違っていました。 彼は個別の優良な株式に大きく投資するべきだと考えており、逆に多くの株式に少しずつお金を掛ける戦略をバカにしていました。

今日、株式のリスクは「市場リスク」と「個別リスク」という2つの部分に分けられることが分かっています。 市場リスクとは、市場全体が被るリスクであり、分散投資では排除できないものです。 実は、投資のリターンに結び付くのはこの市場リスクのみです。 一方、個別リスクは、特定の会社に固有のリスクです。 こちらは分散投資という簡単な手段で排除(相殺)できるものなので、投資のリターンに結び付きません。 負う意味のない全く無駄なリスクです。

このことから、いわゆる「ハイリスク・ハイリターン」は必ずしも正確な表現ではないことが分かります。 リスクの中には、個別リスクという、報われることのないリスクも含まれているからです。 より正確には、「ハイ『市場リスク』・ハイリターン」なのです。

さて、個別リスクは、組み合わせる株式の種類を増やせば増やすほど減っていきます。 すべての株式を保有すれば、個別リスクは完全に相殺されてゼロとなり、市場リスクのみが残ります。 すべての株式を保有するポートフォリオとは、事実上「地球株」のことです。 よって地球株には、リターンに結び付かない無駄な個別リスクが一切なく、リターンに貢献する市場リスクのみが存在します。

【補足】地球株は、それぞれ通貨が異なる各国の企業群で構成されているため、そのポートフォリオ内部では通貨も分散されています。 よって地球株を保有することで、為替リスクに対して完全に中立の立場でいることができます。

市場リスクのみがリターンの源泉であり、これを排除することはできません。 純粋な市場リスクのみを持つ地球株も時に暴落しますが、これは長期的なリターンのために短期的に負うべきリスクなのです。 筆者が地球株への投資を始めてから数年後の2008年にリーマン・ショックが発生しました。 これは、アメリカの住宅ローン問題でリーマン・ブラザーズが経営破綻しことを皮切りに発生した、地球規模の金融危機です。 当然、地球株も大暴落しました。 リーマン・ショックは市場リスクが顕在化した好例です。

ところで、このように特定の株式や市場ではなく、全市場の暴落は非常に大きなチャンスです。 というのも、通常どこかの企業や国が不振であっても、それ以外の企業や国にお金が移るだけなので、地球株自体はなかなか暴落しません。 言い換えれば、地球株を安く買える機会は希少なのです。 市場リスクだけが「報われるリスク」であることを考えれば、リーマン・ショックのような地球規模の暴落は、市場リスクの塊である地球株の貴重なバーゲンセール機会となります。

【補足】筆者は定期的に定額の地球株を購入していますが、これは自動積立となっており、基本的には放置しています。 しかし、リーマン・ショックで地球株が大幅に安くなった当時は、少々色気を出して積立額を大幅に増やしました。 通常は動かさない財形貯蓄やその他の預金を取り崩し、地球株の購入に充てたのです。 これは上記の考えに基づいた行動です。

「3-1. 株式の実績」において、株式は短期的に売買するものではなく、長期的に保有すべきものであると述べました。 これを本節の内容を踏まえてより正確に言えば、株式投資では長期的に「市場リスク」を取り続けるべき、ということになります。 いくら株式を長く持てば良いと言っても、個別の株式では報われる可能性が高くありません。 たしかに個別株式も一部「市場リスク」を含みますが、全体のリスクの大半は、リターンに一切寄与しない「個別リスク」です。 個別リスクを長く抱え込んでも意味がありません。 それよりも、できるだけ市場リスクの配分が多いポートフォリオを保有した方が効率的です。 もちろん、そもそも市場リスクしかない地球株の長期保有が最も理想的です。 つまり、できるだけ早く、できるだけ多く地球株に投資して、どんなに市場が短期的に荒れようとも長期にわたって手放さないことが資産形成において重要になります。


お金と労働と地球株

3. 地球株

3-6. 地球株のリスク