前節で株式の優位性について見てきました(参照:3-1. 株式の実績)。 本節では株式投資について、ギャンブルとしての観点からあらためて考察します。 株式投資がギャンブルなのか否かについては様々な意見がありますが、お金を掛ける行為なのですから、率直に言ってギャンブルです。 ただし、競馬、パチンコ、宝くじ、といったほとんど全てのギャンブルと、株式投資との間には決定的な違いがあります。 それは、大概のギャンブルはマイナスサム(あるいはゼロサム)ゲームである一方、株式投資は長い目で見ればプラスサムゲームである、ということです。
各ゲームの定義は以下のとおりです。
たとえば競馬は、ざっくり言うと、掛け金全体の25%がまず胴元に取られ、残りの75%を当たった人たちで分け合うシステムです。 ということは、勝つ人も負ける人もいますが、プレーヤー全体としては構造的に25%分マイナスとなります。 このように、全体のパイが減るゲームをマイナスサムゲームと言います。 宝くじや保険も含め、ギャンブルのほとんどはマイナスサムゲームです。
【補足】保険は、胴元が確実に儲かる「不幸の宝くじ」であり、マイナスサムゲームのギャンブルです。
同じギャンブルでも、仲間内で行う麻雀等では、胴元が居らず、勝者や敗者が生じるのみで、全体のパイの大きさは変わりません。 こういったゲームをゼロサムゲームと言います。
一方、全体のパイが増えるゲームをプラスサムゲームと言います。 このタイプのギャンブルは極めて少ないですが、株式投資はこれに該当します。 その根拠は以下の3つです。
地球上で増え続けるお金がどの会社に向かうのかは誰にも分かりませんが、少なくとも宇宙に散って行ってしまうことはありません。 ということは、株式市場全体のパイは大きくなり続けます。 株式投資によって個々には儲ける投資家も損する投資家もいます。 しかし、地球上の投資家全体を1つのグループと考えれば、このグループの収支は長い目で見れば構造的にプラスとなります。
【補足】「お金が地球上で増え続ける」ことのみに着目すれば、株式市場に限らず地球の資産市場全体もまたプラスサムゲームの場であると言えます。 この認識に基づいた戦略については後ほど検討します。
ここまでで、大事なことが2つ分かります。 1つは、株式投資は例外的に有利なギャンブルであるということです。 より重要なもう1つは、プラスサムゲームの特徴を活かした戦略を立てられる点です。 つまり、株式投資がプラスサムゲームであるなら、地球上の株式市場全体に掛けることが有効な戦略となります。
逆に言えば、個別の株が上がるか下がるかを予想して他の投資家と競争する必要はありません。 というより、本来そのような予測はできません。 一般に株式投資と聞けば、ある銘柄のチャートを見て先行きを予想したり、ある企業の財務諸表を分析して投資に値するか判断する、といった姿をイメージしがちです。 あるいは、そういったことに長けているとされる「プロ」のアドバイスを受けたり、運用を任せる、といったことも良く行われています。 しかし、個別企業の未来を予想することなど実際には不可能であり、時間の無駄です。 また同じ理由で、本来投資にはプロもアマもなく、いわゆるプロに頼るのはお金の無駄です。
株式投資はプラスサムゲームの要件を満たしています。 もし地球上の株式市場全体を持つことができれば、収支は構造的かつ長期的にプラスになると期待できます。 このプラスサムゲームの特徴が、地球株を保有する戦略の有力な根拠となります。