お金と労働と地球株

~無能が30代で資産1億円を達成した方法~

3. 地球株

3-8. 誰がラクをしているのか

あらためて、現代の資本家である株主について考えてみます。 今日の株式会社制度の下、企業は果敢にリスクに挑み、モノやサービスを生み出します。 では、株主は具体的に何をするのでしょうか。 理論上は、株主は資本(お金)を提供する、という役割を担っています。 しかし、モノやサービスの生産にあたって身体を動かしていないのですから、実質的には何もしていません。 ただ株を持っているだけです。 投資する会社の選定に頭を使っている、と言うこともできますが、それは話のレベルが異なります。 あるいは、実働はなくとも株が下がるリスクを負っている、とも言えますが、このリスクは分散投資によってある程度は回避できます。 昔は資本家=経営者だったので、資本家も「経営」という仕事をしていました。 しかし、やがて大きな会社が現れるにつれて「所有と経営の分離」が進み、株主は所有、経営者(役員)は経営、といった役割分担が生じました。 その結果、現代では資本家=株主となり、資本家の仕事は事実上なくなりました。 強いて言えば、株の「保有」が仕事ということになります。

「所有と経営の分離」が生み出したこの現象が大変重要です。 いくら資本家が恵まれているといっても、昔のように企業を経営しなければならないのであれば、能力が低い者の蓄財手段として不適切です。 企業を経営するには人並み以上の能力と労力が必要になるからです。 しかし、所有と経営の分離により、状況が一変しました。 現代の株主は、直接身体を動かす必要がありません。 まさに能力も労力も要らない、という低能力者の必要条件を満たす蓄財手段となります。 特に本サイトが推奨する地球株の保有者は、頭すら動かす必要がありません。

資本主義経済の下では原理的に資本家と労働者という2種類の人間がいます(参照:2-2. 資本家と集金アイテム)。 ただし、現代はマルクスが生きていた時代とは異なり、もはや資本家と労働者は区別できない、と言われることがあります。 たしかに、昔は資本家=経営者でしたが、所有と経営の分離が進んだ現代はそうとも言い切れません。 また、今では労働者も株式を買うことができるため、そのような労働者は資本家を兼ねていると言えるでしょう。 もはや区別ができないという主張も頷ける気がします。 しかし、現代も資本主義である以上、労働をピンハネした分が資本家の利益になるという根本的な仕組みは昔と変わらずに生きています。 現代では昔と比べて階層が細かくなり、複雑に見えるようになっただけです。 また、資本家と労働者を兼ねる層が出てきたことも事実ですが、これは両者の区別を不可能にするものではありません。 筆者の認識では、現代の資本家と労働者の境界線は、生きるために労働が必須か否かです。

以上を踏まえ、現代の資本主義経済下の主要プレーヤーを「ラクさ」を軸にざっくりと階層分けすると上図のようになります。 なお、この序列はあくまで立場の違いから構造的に生じる労力の大きさに注目したものであって、お金持ちかどうかの序列ではないことにご注意ください。 下から見ていきます。

会社員は、資本主義経済の下では構造的に最もつらい立場の人々です。 典型的な労働者であり、労働をピンハネされる現代の奴隷です(参照:2-9. 奴隷と会社員)。 自分のためだけでなく、主として他人のために働きます。 正社員と非正社員の区別があり、一般に非正社員の方が更につらい立場ですが、全体的に見ればそれほど違いはありません。 社内外での会社員同士の競争も激しいです。

自営業者は、ピンハネシステムの中では異色の存在で、直接ピンハネすることもなければ、されることもありません。 基本的に自分のためだけに働きます。 自分の力が全てのなので、競争に生き残るため、経営する能力を始めとした相当の才覚が必要です。

経営者は、現代では雇われ社長とオーナー社長の2種類に大きく分かれます。 雇われ社長は、自社株を持っていない社長であり、大きな括りでは労働者です。 自分のためにも他人のためにも働きます。 雇われ社長は株主からピンハネされていますが、狭い意味では、同時に自社の従業員の労働をピンハネしているとも言えます。 雇われとは言え社長なので、経営に関する高い能力が必要であり、他社と激しく競争します。 一方、オーナー社長は、自社株を持っている社長であり、大きな括りでは資本家です。 純粋にピンハネする存在であり、直接の労働は必須ではありません。 ただし、雇われ社長と同じく高い能力が必要であり、他社との競争が激しい点も同様です。

株主は、資本主義経済の下では構造的にラクな立場です。 現代の典型的な資本家であり、会社員の労働をピンハネすることで、自ら働くことなく利益を得られます(参照:2-7. 労働のピンハネ)。 優良企業の株式を十分に保有していれば、一切働く必要がありません。 ただし、個別株や一般的な株式ポートフォリオを運用する株主は、どの株式を買って保有すべきか、どのようなポートフォリオにすべきか、といったことを常に考える必要があります。 彼らは売買を通じて他の投資家と競争しており、少数の勝者と多数の敗者に分かれます。 また、どちらにしても個別リスクという無駄なリスクを抱え込みます(参照:3-6. 地球株のリスク)。

株主の中でも地球株の持ち主は、構造的に一番ラクができる、ある意味で何もしなくて良い存在です。 上記と同様に、地球株を十分に保有していれば、一切働く必要がありません。 労働も能力も不要であり、更にいえば思考すら不要です。 地球株は地球上の株式が全て含まれた全集合なので、ポートフォリオの組み合わせを考える必要も無ければ、他の投資家との競争もありません。 抱えるリスクは、リターンに貢献する市場リスクのみです。 本サイトが一貫して主張しているのは、この最もラクな立場である地球株の保有者になることです。


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